旦那は最高!でも5才下のニヤニヤ後輩と不倫生活⑤

いつもニヤニヤしてる会社の後輩。正直気持ち悪いと思っていたけれど、一緒に仕事をしているうちにその気持ちは変わっていった。でも、旦那も大好きです。

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「使えるわけないでしょ。何も知らなかったんだから」

「何、それじゃあの話は全く嘘なの? よくまぁ、あんなにペラペラと…」

恐れ入りました。でもあの嘘のおかげで、私たちは助かったようなもの。

でも一瞬にして内容を理解したことは、事実のようである。嘘をひねり出したのも、あの一瞬だったことになる。驚異的な理解力と創造力だ。彼はニヤニヤして話し始めた。

「真理ちゃんの言っているように、本当に肌に馴染むものなのかはわからない。でもそういう商品なんだと売り込みたい気持ちはわかった。それでいいんじゃないかと思ったよ」

確かに指摘されれば、私の思い込みだったかもしれない。よく振り返ってみれば、そんな情報はなかったような気さえする。控えめに表現したつもりだったが、結果的に私の売りになってしまっていた。そんな広告は、過大広告だと指摘されても仕方がない。彼にもその危うさはわかっていたはずである。それなのに、彼は私の企画を援護してくれたわけだ。

彼にも仕事の危機は迫っていた。それは私のせい。でも彼のせいでもある。私に後ろめたさなどはなかったが、結局彼がこの難局を乗り切った。自分のためだったのだろうが、結局は私を救ったことになる。彼の嘘に感謝しつつも、どうも釈然としない気持ちが残った。

「私の企画、思い込みがなかったら採用されたのかな…」

ふと口をついてしまったその一言、それが全ての始まりだった。彼は私の言葉を聞いてしばらく考えていたが、おもむろにスマホを取り出して、一枚の写真を私に見せ始めた。

「これ、僕の好きな海岸の写真。よかったら今度、一緒に行こうよ」

何よ、藪から棒に…。それにしても、何て下手なナンパなんだ。そう思ったが、今この状態の時にナンパしようとする彼の思考がわからなかった。疲れている私には響かない。彼も同じはずである。とにかく今はそんな話に付き合っている気になど、とてもなれない。

「嬉しいよ。でも私には家庭だってあるんだから。そんな話なんて、無理よね」

「これは仕事の話と関係があるんだ。特に今回の企画についてね…」

「もう帰っていい? 溝口も、家でゆっくり休んで…」

そう言いかけると彼はスッと椅子から立ち上がり、手で帰ろうとする私の動きを制した。

「これからが大事な話なんじゃないか。仕事の話だって、言ったろう?」

それからが長かった。彼が言うには、そもそもの私の企画のコンセプトが悪かったのだと。

広告は説明するものじゃない、いかにアピールするかが命である。そのためにはインパクトが必要なのだと。髭剃りに求められるものは何だと、私への講釈が始まったのだ。

彼が言う結論とはこうだ。もしこの企画を手がけていたとしたら、使いやすさなどは前面に出さない。爽やかさを売りに出す。シェーバー自体も、CMの一番後に映すだけ。演出は好きな海岸で、好きなサーフィンをして、陸に上がったサーファーが顎を撫でるだけ。最後に一言サーファーに決め文句で決めてもらえれば、それで効果抜群だというのだ。

私の企画とは真逆の発想だった。きっと彼と話しながらこの企画を立ち上げていたら、衝突は避けられなかっただろう。少なくとも、私の思い描く企画をプレゼンすることはできなかったはず。何度も家にメッセージを送る素振りを見せたが、彼は全くお構いなし。時間がどんどん過ぎていく。それでも彼の熱弁が私に新鮮に映っていたことだけは確かだった。

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