旦那は最高!でも5才下のニヤニヤ後輩と不倫生活④

いつもニヤニヤしてる会社の後輩。正直気持ち悪いと思っていたけれど、一緒に仕事をしているうちにその気持ちは変わっていった。でも、旦那も大好きです。
「君は、この商品のどこが使いやすいと思ったんだ?」
部長は、私の思い込みと思われる部分のページを開いていた。彼を試しているのかもしれない。もはや私の入る隙間はないと感じていた。言い訳など通用する状況ではない。
「部長、使ってみるとわかるんですが、とにかく肌に馴染むんですよ。剃った感じがない、でも後味はスッキリしている。剃り残しがない。今まで使ったことがない感じでした」
「売り始め前なのに、どうやって君は商品を手に入れたんだ?」
「試供品を使って、レビューを書いたんですよ。そのくらいのことはします」
広告代理店にはサンプルが送られてくることもあるが、私たちの広告制作会社にはそれがほとんどない。基本的に代理店から商品の情報が送られてくるだけのことが多い。
部長は手にしていた企画書を置き、私たちを見た。明らかに和やかな表情を作っていた。
「わかった。要するに結果として、二人で作ったというわけだな。今後は企画書を作成する時にもよく話し合って、誤解を招かないような内容にしてくれ。期待しているからな」
私たちの「裁判」は、これで終わった。と思ったが、実はこの先があったのだ。
私たちはデスクに戻り、二人で顔を見合わせて深いため息をついていた。いや、それは私だけだったのかもしれない。彼はどっかり座り込んでいる私に、缶コーヒーを差し出した。
「ありがとう。よくあの修羅場を乗り切ったね。溝口は、おしゃべりなんだね」
すると彼は、またニヤニヤし始めた。何よ、何も変わってないじゃないのよ。でもその時の私には、それを薄気味悪いと思う感情がなくなっていた。疲れていたのかな…。
「真理ちゃんはさ、要するに優しいんだよ」
「何? どういうこと?」
「優しさがあるから親身になろうとする。でもそれが行き過ぎれば、信用だって失う」
「親身って、何よ?」
「要するにお客様のニーズに応えたい気持ちが、暴走の原因だと思うよ」
暴走? どういうこと? 私はグチャグチャな頭を、もう一度整理するハメになってしまった。彼のその言葉の意味を問い直す前に、私には素朴な疑問があった。何で私の企画を理解できたのかを知りたかった。試供品を使ったということにも、引っかかりが残る。
「何で私の企画の中身がわかったの? 溝口に話したことなんてなかったでしょ?」
「企画書に目を通したからね」
「あんな一瞬で、わかるわけないじゃない。試供品だって、使いようがないでしょ?」
すると彼は照れたように頭を掻き始め、いきなり私の耳元に顔を近づけた。