チャラ男大学生とプラトニックな不倫⑥

晶子はアルバイトで知り合った大学生の千葉くんから何度もランチに誘われていたが、千葉くんは生理的に無理な人だった。けれど、人間関係なんていつどうなるかわからない。晶子は少しづつ千葉くんに惹かれ始め最後は不倫関係になってしまった。
息子の幼稚園の夏休みもあっという間に終わりいつもの日常が始まった。
私は相変わらず週に2、3回のシフトで働いている。店長はもっとシフトを増やしてもいいよと言っているが社会と繋がっていることが実感できるし、子育てや家事が本業だから私は現状のシフトの回数で満足だ。
でも不満なことが1つある。それは旦那がまた別の女性社員とランチをしていたことがわかった。
旦那と息子と夜ご飯を食べながら世間話をしていたところ「今日さ、職場の女性社員とランチしながら話したんだけど・・。」と隠すことは一切なく話してる。いろいろと聞きたかったけれど息子もいることだから「そうなんだね。」と旦那の話に乗ることだけしかできない。まだ他の社員が何人かいるなら話はわかるが、2人だけって。
隠れてデートされるよりはマシだけど、決して面白い話ではなく聞き捨てならない話だ。それも2回目。いや、旦那が言ってないだけでもっとあるかもしれない。私が知ってるだけで2回ってことだ。
私がまだその証券会社に勤めていたときは既婚者の異性とランチしたことは一切なかった。既婚者は配偶者以外の人とは2人きりになってはいけないと思ってた。
不満を引きずったまま私は明日の仕事のために早めに寝ることにした。でも、すぐには寝れず目を閉じると考えてしまうことは旦那のことと千葉くんのことだ。
「はぁ。」溜息が自然と出てしまう。
翌日のアルバイト。この日は千葉くんと一緒の時間帯のシフトだ。「あきちゃん、おはよー。そろそろお茶どうかな?」と相変わらずにあいさつのように私のことをお茶に誘ってくる。
このときの私の頭の中は不満を貯めこむダムが崩壊寸前だった。
テレビで不倫の報道を聞くと「なんで結婚してるのに不倫なんてするのよ!?」とテレビ画面に言いたくなるほど不倫否定派だったけれど、よくよく考えると不倫するために結婚する人なんていないと思うし、不倫は当事者にしかわからない気持ちがきっとある。誰もが結婚相手に多少の不満はあると思うけれど、不満が限度を超えて引き金となる出来事があれば誰でも不倫の当事者になる可能性はある。
私の場合は旦那に対する不満があって千葉くんの誘いが引き金になったんだと思う。
「うん。いいよ。いつ?」
頭の中の不満を貯めたダムが崩壊したのは一瞬だった。
「え?あ?本当にいいの?」
千葉くんは私の意外な返事に目をキョトンとして驚いていたようだ。「千葉くんから誘ってきてんだから、そんなに驚かないでよ。大丈夫よ。行きましょう。」今までお誘いを断り続けた人が急に引き受けてくれたら、驚くのも無理はないだろう。
「既婚者なのに、独身のおれと大丈夫なの?」「散々誘っておいて、今更何言ってるの?別にお茶くらいどうってことないでしょ?それとも今まで私をからかっていたの?」
不満のダムが崩壊した私は人が変わったように少し強めの口調でそう言った。
「晶ちゃんって意外と積極的なんだね。来週のシフト休みの日はいつ?おれは水曜日だけど、午前中だけ学校だからランチでも大丈夫だよ。」
ランチか。あまり聞きたくないキーワードだけれど今はどうでも良かった。
「水曜日ね。ちょっと待って」と言い来週のシフト表に目を通すと休みだった。「水曜日は私も休みね。それじゃあ決まりね。」
というわけで来週の水曜日に千葉くんとランチをすることになった。もちろんこのことは家族には内緒だけど。
約束を交わしたときから私の気持ちは学生の頃に初めて異性とデートする前日のような気持ちだ。