恋に落ちたのは卒業式の1日前⑤

高校の卒業式の1日前。私は同じクラスの江崎くんに恋をした。けれど、彼の連絡先は知らない。が、フェイスブックでつながることも出来て私と同じでGReeeeNが好きな江崎くん。江崎くんから借りたCDの「遥か」が思い出の曲となりました。
「それじゃあ、来週CD返してね。」
「うん。それじゃあ連絡するね。」
連絡するね。自然に言えた。
CDは来週に返す約束をして解散した。
私は帰り歩きながら自分のケータイの登録した江崎くんの電話張を見ては顔が微笑んでしまう。
家に到着しても部屋の中でケータイに入った江崎くんの電話番号とアドレスを見ていると顔がにやけてしまう。
連絡先を交換してからは毎日が変わった。学校までの道のりや街中の景色がいつもよりきらびやかに見える。
恋をするって、こんなにも変わるんだってことを実感した。
「CDを返すときにまた会える。」
そう思いながら江崎くんから借りたGReeeeNのCDを聞きながら歌を口ずさむ。1週間くらい借りる予定だけどその1週間が待ち遠しい。楽しみにしている日があるとそれまでの時間がすごく長く感じるというが本当だ。
GReeeeNの「遥か」の曲がすごく好きになった。今までも何回も聞いたけれど江崎くんと再会してからはそれまでとは違う曲に聞こえる。
高校の卒業式の1日前の帰り道。江崎くんが私に向けて手を振ってくれた。あのときの風景が思い浮かぶような曲に思える。
私の思い出の曲となった。
来週着ていく洋服も何を着ていけば良いか迷っているし、けれどその迷っているのも楽しくこれが青春の1ページなんだなって思う。
そして待ちに待った当日。
今日も先週と同じくらいの快晴だ。秋晴れとはこの日と私のためにあると変なことを考えていた。
私なりに精一杯のおしゃれをして大学の授業終わりにこの前と同じ図書館の外で待ち合わせをした。今回は秋らしく少し冷える予想もあったので、ニットで黒のワンピースに選んだ。大人っぽく見えれば江崎くんに好印象残せるかもしれないし。
大学の友達からは「お、今日もデートかな~」と言われた。普段の私が着なさそうな服を着ているからバレバレなんだな。
あとは、ちょっとでも自分をアピールするに借りたときにCDを入れてあった袋は古かったので前日に新しく100均で買ったきれいな紙袋に入れ替えた。
私が到着するのと同じくらいのタイミングで江崎くんも到着した。江崎くんはファッションに興味がないのか、前回と同じ服を着ていた。
「江崎くんお疲れー。CDありがとう。すごく良かったよ。とくに「遥か」は」
最初に話しかけたのは私からだった。
今日はこの前よりも緊張せずに声が出せた。
「でしょ?あの曲はおれもすごく好き!」
江崎くんは先週と同じような笑顔だった。この笑顔を見ると私は安心感を覚える。ずっと見ていたいと思える笑顔。きっと私は江崎くんの笑顔が好きなんだと、このとき気付いた。
「CDありがとう」と言い、CDの入ったきれいな紙袋を江崎くんに渡すと江崎くんは「あれ?この袋だったっけ?」と少し驚いていた。
「あ、前の袋は古いから新しいものに交換しておいたよ。」
「返って悪かったね。」と言われ「CDのお礼だよ」と返した。
それからも自然に話が続いた。GReeeeNのことや小学校のこと。中学校や高校の部活のこと。共通の友達もいるからその友達のこと。フェイスブックのこと大学受験のエピソード。
私が江崎くんを好きなこと以外の思いつくこと全てを話した。