利用者のお孫さんと不倫してる話⑫

「素敵な考えですね。私は小さいときから将来のために勉強しなさい。しか言われてないから今日本沢さんと話せてすごく良かったです。」
「ぼくで良ければいつでも話しますよ。あ、ジャムさんすいません。今日同僚が風邪引いて欠勤になったのでいつもより早く出勤しなければいけないんですよ。」
「そうだったんですね。なんか忙しいところ付き合ってもらってすいません。」
「いえいえ、そういえばラインで連絡取りませんか?」
「わかりました。そしたら私のID教えますね。」
そう言って私はラインのIDを本沢さんに教え、電話を切った。
その直後に本沢さんのラインアカウントからともだち申請が来て私たちはラインの連絡先を交換した。本沢さんのラインのアイコンは本沢さんの自身の証明写真のようなアイコンだった。私はそのアイコンを見ながら、本沢さんの学歴について考えを思い出した。
夫も教育者だけれど夫は自分のステータスための学歴で本沢さんは他人のための学歴。世の中の人全員が他人のためだったら争いとかなくなるんだろうなって思いながら静まり返った部屋で残りのコーヒーを飲みほした。
その日の午後は高校の同級生の友子とランチする約束があった。
夫にも私のお母さんにも伝えており二人とも口をそろえて「ゆっくりしてきな」と言ってくれた。
働く主婦にとっては友人と会えるのは年に数回。唯一ゆっくりできる時間だ。
郊外の評判の良い店に行き、食事と会話を楽しんだ。
友子は私と同い年で30歳のときに結婚しているが子供はいない。
結婚するまでは小さい会社で働いており結婚を機に退職して専業主婦になった。
だからこうしてたまに一緒にランチをしている。
「ジャムは最近、夫婦生活どうなの?」
「ん~。子供の教育方針がちょっと違ってね。私は子供達には自分がやりたいことをやってほしいと思っているんだけれど夫は子供達に教師になってほしいと思っていて、教育方針が私とはちょっと違うんだよね。」友子には包み隠さず話す仲だけれど、さすがに本沢さんのことは口が裂けても言えない。
「そうなんだ。私は子供はがないからまだわからいけれど、教育方針が違うって大変なの?」
「うん。価値観が違うと言えばいいのかな。」
「それならわかる気がする。知っていると思うけど私の夫は車好きで。でも私、車は最低限の車であれば何でも良いと思っているからね。だから夫が車の雑誌読んでいるだけでも、「なんで、そんなのを読むの?」って思っちゃう。」
「でしょ。価値観が違うってストレスなのよね。」
「3年前に結婚したけれど思っていた結婚生活とはちょっと違ったかな。あ、でも離婚したいわけじゃないよ。今のご時世で離婚したら大変なのは目に見えているからね。」
「あ、そうだ。」
友子は何かを思い出したかのように続けた。
「ここだけの話だけれど、私ちょっとした火遊びしているんだ。」
と友子は楽しそうなことをする直前のようなワクワクした顔をしてる。
「と、言うと?」
友子はマッチングアプリを使って知り合った若い男性とこっそり付き合っているらしい。