利用者のお孫さんと不倫してる話⑩

次の日の水曜日。この日の仕事を終えて家に向かい車を走らせ途中のコンビニの駐車場で車を停めそこから電話をしようと考えた。家は見つかってしまう可能性があるからだ。
車のエンジンを消してスマホを持ち電話をかけると本沢さんはすぐに出てくれた。
「もしもし、ジャムです。昨日は子供達が帰ってきたので急に電話切ってしまいすいませんでした」
「お子さんがいるんですか。仕事もして子育てもして忙しくされているんですね」
「現代ではよくあることです。だけど、両親も義理の両親も近所に住んでいるので学校が終わったらどちらかの家に行ってもらっているんです」
「そうでしたか」
この日は世間話をした。それでも私にとって楽しい時間だった。車のエンジンを切り車内が寒くなっていたので震えるような声になっていた。それに気づいた本沢さんは
「もしかして外ですか?」と聞いてきた。
「いえ、車の中です。エンジンを停めているので寒くなってきました」
「全然気づかずにすいません。風邪引くと大変なので帰りましょう」
優しくそう言ってくれていた。
「ありがとう。また電話してもいいですか?」
「もちろん大丈夫ですよ。明日も今日くらいの時間ですか?」
「いえ、明日は仕事が休みなので子供たちが帰ってくるまでなら何時でも大丈夫です。」
「それはちょうど良かった。明日ぼくは昼過ぎから塾に行くんですよ。冬休みの特別講座の準備なんですが。年明ければすぐ大学受験ですから。」
「そういえばそんな時期ですからね。それじゃあ午前中は大丈夫ですか?」
「大丈夫です。午前中なら何時でもオッケーなのでお待ちしています。」
そう言い私たちは電話を切った。気が付くとさっきまでは少し明るかった外はいつしか暗くなっており車内の温度もかなり低くなっていた。
コンビニの駐車場を後にし今からでは夕食を作る時間がないから近くのスーパーで夕食のお弁当を購入した。家族には同僚としゃべっていたら遅くなってしまったと嘘をついた。
けれど、夫も子供たちもお弁当で満足していたので安心したけれど家族に嘘をついてしまった罪悪感は私の中に残っていた。
この日はベットに入りながら、家族に付いてしまった嘘について考えていた。電話で話しているだけだから不倫ではないよね。それに会ってもなければ、会う予定もないし。でも本沢さんは私に電話番号を教えてきたってことは個人的な関係になりたいから渡してきたのかな?それも私を既婚者と知っていて。
もしも、電話の関係じゃなくて実際に個人的に本沢さんと会ったら。いろいろ考えていたらいつの間にか寝ており気付けば朝になっていた。
今日は仕事が休みだけど夫はいつも通り仕事。娘もいつも通り学校。息子は私のおばあちゃんの家に行く。おばあちゃんは私が休み日でも私がしっかり休めるよう子供を預かってくれる。けど、本当は孫の面倒を見たいからそう言っているだけだと思う。 どちらにせよ私は親に恵まれている。3人を送り出し朝食の片づけを済ませ時計に目をやると9時5分前になっていた。コーヒーを入れスマホを手に取り今日も私から本沢さんへ電話をした