利用者のお孫さんと不倫してる話⑨

私は初めて付き合った男性が今の夫です。女子高を出て介護の専門学校を出て介護施設に就職。男性から告白されたこともないし出会いと言える出会いもほとんどない。異性の免疫がないとは私のことを言うのだろうか。

「お久しぶりです。」

「数日前に会ったばかりですよ笑」

本沢さんがそう言ってくれたから安心した。

「そうでしたね、すいません。」

「急にメモなんて渡しちゃってすいませんでした。ジャムさんとお話してみたいなって思いまして。」

「迷惑してないので大丈夫です。でも私は既婚者ですよ」

不倫は良くないので先に伝えておく。もしかしたらこれで電話を切られるかもしれないと考えたけれど

「祖母から聞いていたので知っていました」

返事は意外なものだった。本沢さんは私が既婚者と知っていてメモを渡してきたのだ。私に不倫を持ちかけているの?

「えっ?知っていたのにどうして?」

一瞬引いてしまったけどその後私はまたもや不意打ちをくらった。

「ジャムさん、きれいな顔なので」

自分の顔をコンプレックスに思ったことはない。でも美人とも思わない。童顔と言われたことは何度もあるけれど”きれいな顔”って言われたのは30年ちょっと生きてきて2回目。それも1回目も同じ人から。

そう言われて不快な気持ちになることはない。普段から言われいてる女性からすればなんてことないかもしれないけれど私のように異性の免疫が少なくてそう言われた事がない女性からすればドキドキしてしまうものだ。

「あ、はい。ありがとうございます。」

不意打ちをくらった私にはこれくらいしか返せる言葉しかなかった。

「そういえば、相談ってどんなことだったんですか?」

急に我に返り相談事があったことを思い出した。

「あ、えっと、本沢さんって塾の先生なんですよね?」

「そうですけど、言いましたっけ?」

「いえ、以前おばあちゃんから伺いまして。そういえばおばあちゃんは残念でしたね。」

「そうでしたか。祖母のことは残念でしたが年齢も高齢でしたし、老衰だったのですぐに受け入れることも出来ましたしもう大丈夫です」

「それは良かったです。それで、夫も先生をしておりまして。塾ではなく中学校の数学の教師です」

「そうなんですか。とても優秀なんですね」

それから私は本沢さんに夫の教育方針について相談をした。

「そうでしたか。それは大変でしたね」

本沢さんは私の話にしっかりと耳を傾け聞いてもらい、それだけでもとてもスッキリしたのでこの人に相談して良かったと思った。

「なんだか一方的に話してばかりですいません」

「いえ。話を聞くことしかできませんので」

なんだかドキドキもしたし安心感もあって心地よくてどれくらいの時間話してかわからないほどだった。この時間がずっと続いてほしいとさえ思えたが、次の瞬間に現実に引き戻された。

「ただいまー」

子供達が帰ってきたのだ。

「本沢さん、すいません、明日同じくらいの時間にかけますね」

特に話す用事があるわけではなかったけど、とっさに口から出た言葉だった。

「えぇ。わかりました」

と返事を確認した後慌てるように電話を切った。

「おかえりなさい」 今日は私の母親のところに預けており子供たちを連れて来てくれた。この日は電話したことが頭から離れることがなかった。それと同時に明日また話が出来ることが楽しみでもあった。

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