利用者のお孫さんと不倫してる話④

その時期に夫が娘を塾に入れてはどうか。という話を私に持ちかけてきた。
娘はまだ小学2年生になったばかりだけど学校の勉強が好きで家でも勉強してる。私は学校の勉強が好きではなかったからその点は私に似なくて良かったと思ってる。
けど夫は娘の成績をもっと上げたいから塾の提案をしてきたのだ。なぜ成績にこだわるのかと私が夫に尋ねると
「教師になってもらうため」
と最初から答えを準備してたかのように答える。
塾を反対してるわけではない。でも親が子どもの将来の職業を決めるは反対だ。
子供にはやりたいことをやってほしいと思う。夫にそう伝えたけれどその日は話は平行線だった。
でもその日をきっかけに夫と教育に対する価値観が違うことに気が付きました。
夫の家系は親戚の半分近くが教師。夫の父親は小学校の教頭で母親も結婚をするまでは中学校の教師をしていた。まさに教師一族である。
もしかしたら夫も小さい頃から教師になることが当たり前と教えられて育ったのかもしれない。
季節は4月。天気は晴れ。ぽかぽか陽気だ。今日は仕事で本沢おばあちゃんと近所に散歩に出かけてる。散歩と言っても歩くわけではなく彼女が車いすに乗り私が押しながら会話を楽しむものだ。ゆっくり歩きながら会話をしてるうちにこの前の夫との話になった。
あれから夫との話では決着が着かず娘に塾に行きたいかを聞いたところ今よりも勉強頑張りたいから行くと即答。頑張りたいのに反対は出来ないから私も応援することになり娘は塾へ。
それを聞いた彼女は
「今の時代は大変だね。私がまだ若いとき子供には将来人の役に立つことをしなさいと教えるだけで子供は育ったんだよ」
彼女はおそらく子供に精一杯の愛情を注ぎ続けたんだろう。そうでなければ子供は施設に顔を出さない。そう思いながらも彼女は続けた。
「だから、孫にも同じことを教えてるよ」
「そういえばお孫さんはなんのお仕事をしてるんですか」
会話の流れでそう聞いた。
「学習塾の先生だよ」
本沢さんと知り合ってから1年ちょっと。”きれいな顔”と言われてからは毎日そのことを考えてしまい本沢さんが施設に来るたびに気になって目で追ってしまっている。どうやら私は恋をしてる。
と気が付いてしまったけれど私は既婚者だし関係も利用者の孫。叶わない恋だとわかってるけど忘れるのも難しい。
宙に浮いた気持ちを引きながら季節は冬になり夜勤をしていたとき、日付が変わろうとしてた時間にいつも通り利用者の皆さんに異常がないか見回りをしてたときにそれは起きた。
本沢おばあちゃんの息がなかった。