復讐のための不倫が本気になってしまった。⑧

お酒も回ってきて、話はこの前の主人の話になっていた。電話でも話たけれど、また同じ話をしてる。けれど天野くんはあいづちをしながら私の話を聞いてくれる。
何度か同じ話をし酔っぱらった私は、卒業旅行の話に戻した。
「そういえばさ、卒業旅行でけいこちゃんと佐々木くん良い感じだったの覚えてる?」
「覚えてるよ!けいこちゃんが酔って吐きそうだから佐々木が外の空気を吸わせるために一緒に外行ってなかなか戻ってこなかったよな。」
「そうそう。それがきかけで、あの2人社会人になって付き合い始めたんだよね。」
「あったね。けれど、2,3年で別れたらしいね。元気してるかな。」
「私も全然会ってないし、連絡も取ってないからどうなってるんだろうね。」
私もそのときに酔って天野くんと一緒に外行ってたらなとふと想像していた。
「私ね・・・。」
「うん。」
なんだろう。今なら大学のとき天野くんのことが好きだったと言えそう。
「大学のとき、天野くんのことが好きだったんだ~。」
お酒の力もあったのか言ってしまった。酔ってるからきっと天野くんも流してくれるだろう。
「えっ!そうなの!?」
天野くんは目を大きくして驚いていた。私、何か間違ったことを言ったのか?と考えたがさすがに酔ってても自分の発言くらい覚えている。
「おれも、るいのこと好きだったんだ。だけど、告白するタイミングなくてさぁ。」
「えっ!そうなの!?」
私もさっきの天野くんと同じようなリアクションをした。いやこれはビックリするから自然にリアクションが出たのだろう。もしかしたら私たち結ばれていた可能性高い?けれど、天野くんはもうすぐ結婚する彼女がいるし、私も忘れていたが、不倫未遂をしていた主人がいる。
「なんだ。そうだったのかぁ。それは惜しいことをしたなぁ。」
天野くんはそう言い、グラスに残り少ないお酒を飲みほし、ポンと軽く音がでるくらいでグラスをテーブルの上に置いた。
「私も惜しいことしたな。もし、コテージで一緒になってたら、不倫未遂の主人と結婚してなかったかもしれないし。」
ついつい本音が出てしまった。不倫未遂の主人でもしっかり稼いできてくれるから感謝してる。けれど、私に残業とウソをつき同僚のみかに既婚者であることを告げずに会社の外で会っていたことを思い出すと復讐心が燃え上がってきた。
私は残り少ないお酒を飲みほし、天野くんと同じようにポンと軽く音がでるくらいでグラスをテーブルの上に置いた。
「天野くんさ、私のこと抱きたくない?」
軽いノリで私は天野くんを誘ってみた。多分断られるだろうと思っていた。
「それじゃあ、行こうっか。」
天野くんの口癖の「行こうっか」が出てきた。軽いノリで話してみたけれど、私の心臓は今頃ドキドキしてきた。なんだか大学の頃に戻ったみたい。正確に言えば卒業旅行のコテージに戻った感覚だった。それも天野くんと2人だけのコテージに。今日だけは戻っていいのだ。と自分を肯定していた。